P S Y C H O K R U S H E R - H O R R O R ! 恐怖新聞 5th シーズンス

#05:慰霊の森



act 01





その日はまるで昭和46年7月31日、旅客機衝突事故当時にタイムスリップしたかのように茹だる暑さであった。




まるで浮かばれない亡霊達が死地に我々を誘い込まんとしているかのように。




我々は今回、例によってTONKY師匠との合同ロケを敢行した。




場所は岩手県内、更には県外にもその名を轟かせる岩手県雫石、慰霊の森。




噂話はもちろんの事、実際にかなりの心霊現象が起こるTONKY師匠も折紙つきの心霊スポットである。





おおまかな心霊現象として、








○慰霊の森に駐車しておいた車に白い手形がつく。





○駐車していた車の向きが逆になっている。





○血まみれの男が「静岡まで乗せてくれ」と言ってくる。

















と言う訳で今回は早めに目的地に向かう予定で私は昼下がりのALEX邸に赴くのであった。













「お邪魔しま〜す」








と、言いつつもすでに勝手に家に上がり込んでいる私。









しかしそれに答えたのはALEX当人ではなくその実の兄であった。









「どうぞ〜」










「あれ??ALEXはいますか??」










「今シャワーを浴びているからそこで待っててよ」











言われるがままにリビングで待つ事に。











「今からロケ??」













「ええ、慰霊の森に行ってきますよ」









「ふ〜ん」











やはりあまり興味無さそう。











「まぁ頑張ってよ」











と言いつつ子供達と買物に出かけていく実兄。













しかしその話にソファで鼻の黒ずみをとっていたALEX実妹が食らい付いてきた。










「慰霊の森に行くんスか??」








「うん、行って来るよ」









「あそこヤバいっスよ」









「らしいね、俺行った事ないけど」









「前に行ったけどあそこはかなりヤバいですよ」











「山なんだよね」










「山ん中ですね」









「それなら心配事が一つあるんだよね」









「なんかあるんスか??」










「基本的に体力がない男がいるからね」













「誰スか??」








ちらっと風呂場を見る私。









「あれスか」










「うん、あれ」









「体力ないの??」










「ずい道の時は坂道でヒィヒィだったからね」












などと話をしているとALEX当人が現れた。










全裸で。
















「全裸かよ!!」





「それじゃ行くか!!」






「全裸でか??」






「ダメか??」












「当局は許さんだろうな」














「チッ、、、












じゃぁ、
ホタテで良いか、、、












「それは武田久美子だけで十分だろ!」









「いちいちうるせぇ〜な」









いそいそとパンツを履くと









「それじゃ上で準備でもするか」








「あぁ、その前に服だけは着ろよ」









「ん??俺は一向に構わんのだが」









「俺が構うんだよ!!一緒の歩く者の身にもなってみろ」







「いちいち注文の多い奴め」








「それじゃ交通事故には気を付けて下さい」







ALEX実妹からのありがたいアドバイス。








「霊に憑かれるよりも警察に捕まる事の方が確率高そうだよ」







2階の本部で我々は準備を始める。










と言ってもALEXが前もって準備をしておいてくれたらしく後は運び出し作業だけとなっていた。







変質者ではあるがやる事はやっているALEX。








BBSに書き込みをすると我々は運び出し作業を始めた。










「今回はビデオカメラは無しか??」










「あぁ、一眼レフを使うからな」









「そりゃ良かった、ビデオカメラは重くてたまらん」









順調に車に機材を詰め込むと我々は一路、慰霊の森を目指すのであった。










と思いきや。











「あれ??眼鏡がない、メガネメガネ」








「お前は横山ヤスシか?!」








「おや、どうやら忘れてきたらしい」






「んじゃ、待ってるから持って来いよ。ついでになんか防寒用の服もあったほうがいいぞ」






「ん??こんなに暑いのにか??」







確かに気温はすでにゆうに25度は越しているだろう。






言えば真夏の暑さである。







しかし心霊ロケの時に限ってはこれが通用しない時がある。







ことさら山等の高所のとこだと気温がぐっと下がっておりかなり寒いのである。








これは八甲田山とあいのり温泉で得た経験である。






眼鏡と防寒用具を持ってきたALEXを乗せていざ慰霊の森に出発となった。








今回は師匠の予定もあり夕方からのロケなので私も専用のライトが欲しかったこともあり、ALEX邸からも程近い日曜生活雑貨店『管文次郎商店』(通称カンブン)にてライトを購入。









続いてまだ食料も水分すらも補給していないALEXの体の事を考え、国道沿いのコンビニに寄って行く事に。









ピンポ〜ン♪







「いらっしゃいませ〜.....?!」








空腹の私はすぐに食料を調達するためにパンコーナーに向かう。








しかし元からそれほどパンが好きではない私の食欲を誘うようなパンは見当たらない。






そこにふと目に入ったのは蒸しパン。








「しかし今回も蒸しパンを買ってしまったら






まるで俺が
蒸しパン好きキャラのように思われてしまいそうだな」



「いいんじゃないか、そういうキャラで」




「蒸しパンキャラか、それも嫌だな」



   この時FANCY伊藤が買ったパンは??





無理に違うパンを選び、ジュースと共にレジに持って行く。




チラッ、チラッ。




なにやら視線を感じる。




が構わずにレジでの支払いを済ませる私。





ALEXもコーヒーにハンバーガーと言う米国的な物を購入。



やはりそこでも。





チラッチラッ。





店内にはなにやら不穏な空気が漂っているらしい。






なにやら我々に対しておかしな視線を感じるのである。





食料を片手に意気揚々と車に戻るとALEXがおもむろに言った。





「なんか変な視線を感じなかったか??」





「あぁ、感じた。我々も有名になったか?!」





「いや俺は違う意味だと思うんだ」





ALEXの視線は私のパンツに。





「あぁ、これ。新しい軍パンを買ったんだよ」






それから自分のパンツに目を向けた時、私はALEXの真意に気付いた。





ALEXもいつものウッドランドの軍パン。




「これってもしかして」






「多分、あの店員、俺達これから戦争に行くかと思っていたはずだぞ」






「ンな訳あるか!!こんな貧弱な軍人がいるか」













「あぁ、失敗した。













これなら店内だけでも












片言の日本語使っとけば良かった」

















「コンビニの店員、騙してどうすんのよ」





「これから戦争が起きるんじゃないかって不安感を煽ってやることができたじゃないか」





「まったく無駄な事にばかり労力と知恵を使いたがりやがって」











我々は一路、慰霊の森を目指して南下を始める。


















ところが!!!














「♪かゆいところは〜♪」







突如歌いはじめるALEX。









「なんなんだ??」










「知らんのか?
ムヒテーマソングだろ」








「知らん」









「♪かゆいところは〜どこ〜♪」









実はストラップはもう1個





上機嫌で歌い出すALEXをよそに我々の乗る車は順調に走り続ける。















しかし順調に走り出したかと思ったその矢先の事である。













「あっあれを見ろ!!」










突如、ALEXが慌ただしく叫んだ。


















場所は人口密度の少ない町である。













こんな場所で只ならぬ声を上げるほどの事があるのであろうか??















「あの女子高生、パンツ見えそう!!!!



「なにぃぃぃぃ?!」







すれ違い様にALEXが顔を確認。






「あぁ〜残念。なんか不機嫌そうにしていたのがマイナス点だな」





「つーか貴様が見過ぎているのがわかったから不機嫌そうにしてたんじゃないのか??」







「そうか??」






「多分そうだろう」






「俺が本気になったら........」







「いや本気にならなくていい」








「そうか」








それから程なくして今度はALEXは携帯を取り出した。










チラッと見るとその待ち受け画面には。















「マコーレー・カルキン??」









「どう見間違えたら







・・・・
マーコレー・カルキン







に見えるんだ??」










 
・・・・
マーコレーじゃねぇーだろー!!」





「あれ??」




マコーレーだろ!!」








「あぁそうだっけ?」






「そんなイヤらしい名前じゃないだろ






「そうか、、、、あっ、ちなみにこれはハリポタのハーマーヨニー??だっけ?」







「名前まで知るか!」










「まぁ、例によって自作だけどな






「このオタクが!!!」






と、そこでまたしても我々に新たな異変が襲い掛かった。





それはトンネルを潜り抜けて時のことである。






ALEXはいざ携帯を弄り始めたのであるが、






「おや??」






「今度はどうした??」






「圏外だ」





「ふーん、トンネルを潜ったばっかだからな。もう少し走れば大丈夫だろ」







しかしいくら走れど圏外。





「これは一体??」






「俺のも圏外だ」






「ここはかなり電波状況が悪いらしいな」









「そうみたいだな」










パナウェーブ研究所の連中はここに住めばいいんだよ、電波ないんだから」







「まぁそれは言えてるな」
























電波状況が悪いこの山の中をひた走り、我々は更に南下をする。






南下すると共に電波状況はよくなり携帯は無事に使えるようになった。







「ところでALEXは就職決まったのか??」






「いや、まだないな」






「この世の中なにかと不況だからな」









「これからはサイコ☆クラッシャー
(株)を立ち上げるしかないな」






「(株)??(有)の間違えではないか??」









「いや(株)だろ」




















「まぁ株でも有でもいいがなにかやる事はあるのか??」








「あぁ差し当たっては
外資系か」







「外資系??なんか金持ってそうな響きがするな」










「そうだろ!」











「んでどうやって儲けるのよ」


















「それはだな、












自転車東南アジア輸出だ」








「アホか!?」











「ん??これも立派な
外資系だろ」










「まぁそうは言えるが、だが自転車を輸出する金だけでも結構な費用になるだろう。




それで儲けることが出来るのかね」









「ん〜確かにな、
なら、、、、









自転車を輸出して戻って来る時に










中国人を密輸か!?」















「それなら儲けれそうだな」





「だろ!!」





「だな.....って先立つ金すらないだろう」






「なんだ良いアイディアかと思ったんだがな」






そんなバカ話しをしている内に滝沢まで我々は進んでいた。






雫石までは後もう僅か。





しかし時間にはまだ余裕がある。





「ここいらでちょっとロケして行くか??」





「なんかあるのか??」





「四十四田ダムがあるぞ」






「それなんかあるのか??」






「tonky師匠のサイトにスポットとして乗っていたぞ」






「厨川駅も近くだろ」







「あぁでもどっちかだな」






「どっちかか、なら厨川駅だな」









我々は慰霊の森ロケの前に軽く肩慣らしとして厨川ロケと突如敢行することに。








そこで我々を待っていたものとは、、、、。











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